拘禁反応。
こーきん、はんのー♪
こーきん、はんのー♪

バイト終わったら
すぐさま、学校に向かった。

図書館に行くため、
早足で、急ぐ。

るるる~
こーきん、はんのー♪

図書館なんて
滅多に行かないから
なんだか、場違い。

入り口を入って
司書のレディーを
見た瞬間、
あたしのくるところじゃないって
思っちゃったけど、
がんばった。

だって、
司書のレディーの
あたしを見る目、
あら、ゲイ?って感じの目。
ひさびさだよ、
この差別を全開した目。

思いっきりあたし、
その司書のレディーに

 なめるように、
 上から下から見るんじゃないよ

って、オトコ声で
言いたくなっちゃった。

むかつく~

やっぱ、背が大きめで
骨格がオトコだと
こういう古風なオンナには
どうも気持ち悪いモノにしか
あたしは、見えないらしい。

一応、バストもDカップを
作ってもらったし、
どうみても、オンナになった
つもりなんだけどね。
顔だって、輪郭でわかんないように
ちょっといじってるしさ。
もちろん、声出せば、別だけど。
でも、見た目であんなふうに
見られるほど、ヘンなオンナじゃ
ないと、最近は思ってた。

ふつうの社会では、
あたし、まだまだ
できそこないの
どっちつかずなんだよね。
オバケみたいに、
普段は見たくないものなんだよね。

ああ、気分悪くなってきた。
あのオバ・・・じゃない
司書のレディーのせいだ。

なにを調べにきたか、
忘れてしまった。

えっと、えっと、なんだっけ。

こーかさす?
コーディロイ?

ううんと、はんのー

りとますはんのー
びっくりはんのー

まったく、
トラウマだよ。
あの目つき。

ああ、トラウマ!?
近いな。

トラウマはんのー

トラウマティック

トラウマじけん・・・・

うううう
わかんない。
なんだっけ。
あんなに、覚えて、
取り付かれてたのに。

そうだ。
トラウマの本、探してみよう。

トラウマ・トラウマっと。

ええーーーーー
こんなにあるの、トラウマの本って。
ここの書棚、ぜんぶ、
トラウマ!?

ありえないから。
もう、それだけで
トラウマだから。。。。

あたしは、ぐったりして
一冊、適当なのを
とって、椅子に座った。

ああ、ぐったり。
なんだか、疲れた。
あああ、なんだっけ。

トラウマ・・・
難しすぎて、わかんない。

あたしは、ぼんやり本を
広げては眺めて、
ラン医師を思った。

そして、医学部時代を
思い出す。

あたし、やっぱ
医学の勉強向いてなかったなー
としみじみ思う。
あんなに、勉強したのに、
しかもオトコでいても
気にならないくらい
眠らずにレポート書いたのに
ちっとも、勉強したことを
覚えてない。

ラン医師は、もうすっかり
中年以降なのに
ちゃんと、いまも
新しい医学を勉強しつづけ
あたしたちのような
患者を診てくれてる。

その大きさに
感動した。

あたしは、司書のレディーに
変な目つきされただけで、
自分が何を調べたかったのかを
忘れてしまうくらい
混乱してしまう。

まだまだだ。

ラン医師のように
大きなニンゲンになりたいなって
こころから思った。

ぼーと
図書室で、カリカリ
勉強してる学生を見るともなく
見た。

こうして、何の問題も
抱えていなそうな学生だって
あの司書のレディーの
目つきを気にしたり、
大きな秘密をこころに隠して
いるのかもしれないなって
しみじみ思った。

あたしは、もし、医師になって
いたとしても、
きっと、ラン医師のように
ちゃんと距離を置いて
患者を診れないだろうなって
思った。

正解だ。
あたしが、アーティストに
なったのは。

ことばでの
コミュニケーションは
難しい。

あたしは、自分の大きな秘密を
抱えていたせいで、
思春期に、きちんと
コミュニケーションを
学べなかったことに
ちょっぴり悔しく思った。

もう、ナンシーのことや
何かを調べることを
今日は、やめよう。

あたしは、自分のことを
オンナらしく大事にしなくっちゃっね。

せっかく、困難な道を
乗り越えて
オンナになったんだもの。

大事に。大事に。

うふふ。
とにっこりして、
本を閉じた。

ふと目を上げると
そこには、リンダがいた。

にっこりして
ウインクしてくれる。

さあ、授業の時間。

リンダと小さくハグして
教室に、向かった。

つづく・・・・・