みんなは、さいごに
ナオミ先生から
おそろいのオレンジ色の包み紙の
キャンデイをひとつづつ貰って
にこにこしていた。

そして、そのまま
みんなで夕食に出かけることになった。

ダンススペースのある
ベトナムレストランに行く。

このベトナムレストランは、
不思議な空間だ。

まるで大きな木をくりぬいたような
店内のつくりになっており、
あちこちから
森林のなかのような飾りが
垂れ下がったり
突き出ていたりする。

うっそうとして
うすぐらい店内の2階を
いつも通り貸切って、
あたしたちは、
美味しいベトナム料理を堪能した。

まずは、温かいフォー。
米でできたヌードルが
鳥の透明なスープに
たっぷりの野菜が入っていて
最高に美味しい。

お肉料理に卵料理。
そして、さまざまな野菜のお料理が
ぞんぶんに並び、
あたしたちは、半分立食のように
お料理の周りを歩きながら
食べ回る。

ベトナム料理は、
フランス領だったことが
あるせいか、
かなり繊細なフランスの香りが
している。

もちろん、香辛料とか
パクチーとかで
独特の香りがするのだが、
お肉も卵も
ペーストになっていて
フランスパンに乗せられていたり、
野菜炒めの飾りつけがフランス風だったりする。
それが、絶妙のバランスで
また素晴らしいのだ。

あたしたちは、
お腹が満足し始めると
不思議な言語のように聞こえる
ベトナムロックの音楽で
踊り始める。

まるで、東洋のお祈りのような
その言葉は、あたしたちに
魔法をかけてくれて、
ただのロック音楽ではなく
宗教音楽で踊っているような
そんな神々しい気持ちになるのだ。

みんなそれぞれ
自分の好きなダンスを
勝手気ままに踊り
聞き取れたフレーズを
大合唱した。

ベトナム語がわかるひとがいたら、
とんでもないことばを
大合唱しているのかもしれないが、
あたしたちにとっては、
愛の言葉になっていた。

お店の閉店時間まで
粘って踊りつづけ、
あたしたちは、
ベトナムのお茶のジュース割りという
不思議な飲み物をゴクゴク飲んだ。

本当に、踊り明かしてしまった。

外に出ると、
なんと、空が明るくなっていた。

あたしたちは、
とんでもなくハイになっていて
みんなで肩を組みながら
踊りながら歩く。

なんだか、小腹がすいたよね、
という誰かのひとことで
まだ開店したばかりの
ドーナツショップに入った。

まるで貸切のような店内になり
お店のひとは、ちょっと驚いた顔を
したけど、気にせず
あたしたちは、好きなドーナツに
熱々の珈琲を頼んだ。

踊り明かした朝の
あまーいドーナツに珈琲は、
あたしたちのからだとこころを
とろけさせた。

踊り続けていたせいか、
みんなすごい食欲で
何個もドーナツを平らげて
大笑いした。

お腹が一杯になると、
みんな睡魔がどっと
襲ってきたように
口数が少なくなり、
帰っていった。

あたしも、みんなに送られながら
自分の家に帰ってきた。

ぬるめのシャワーに
バニラのソープバーで
からだをさっと洗って
あっというまに
ベッドにジャンプした。

心地よい疲労感に包まれて
最高の気持ちだった。

あたしは、
バニラのお香を焚くと
瞬く間に眠りに落ちた。

夢を見ていた。

  ジャングルのなかを
  みんなで行進している。
  ヌルヌルの土の道路に
  足を取られそうになり
  なんども転んでいた。
  怖そうな行進のインストラクターが
  あたしたちを叱咤する。
  その大声は怖くって
  あたしは、メソメソ泣いていた。
  すると、急に場面が変わり
  あたしは、赤ちゃんになっていた。
  からだは、赤ちゃんだけど、
  あたまは、オトナのままだ。
  あたしは、混乱して、泣き続けた。
  すると、クライシスインストラクターが抱き上げた。
  ゆっくり揺すりながら歌うように話しかける。
  求めるものは、必ず得られるよ、と。

あたしは、涙を実際に流しながら
目が覚めた。

なんだったのだろう、この夢は。

頭を揺すると、ほとんどもう
思い出せなかった。

でも、苦痛にあえぎながら
行進していたことを思い出した。
なんだか、ぐったりしている。

あたしは、グレープフルーツっと
小さい声でつぶやきながら
バスルームに行き、
グレープフルーツの入浴剤を入れた。

バスタブに熱めのお湯が一杯になると
グレープフルーツの
すっぱくて甘い香りに包まれる。

もう、お昼だ。

あたしは、太陽の強い光を浴びながら
のんびりと、
グレープフルーツにつかった。

からだが温まり
ほぐれてくるにつれて、
あたまがはっきりしてきた。

シャワーを浴びているころには、
お腹が鳴ってしまい、
ものすごい空腹に気づいた。

さあ、何を食べようか。

あたしは、泡だらけの髪を
すすぎながら、
食べたいものを
思い描き、笑顔になった。

つづく・・・・