メリーさんの羊が大音響で鳴る。。。

なんだ、なんだ、なんだ??

驚き、目覚める、あたし。

そう、あたしは、携帯のメリーさんの羊で
起きるのだが、毎日、耳元で鳴るので、
慣れなくって、びっくりしちゃう。
自分で決めたのに、なんでメリーにしちゃったんだろうって
毎日、後悔する。
でも、必ず起きられるっていうのは、すごいことだけど。

あたし、実は、トランスしてて、
出生時はオトコだったんだけど、
25歳のときに、オンナにオペしたんだ。
家族は、まあ好きにしなさい、と
かなり寛容だった。
きっと、パパもママも、以前から
なんか違うって思ってたんだと思う。
どちらかというと、嬉しかったのかも。
あたしは、弟と二人兄弟で、
両親は、娘がほしかったみたいだから、
ようやく娘ができて、ラッキーって感じ。
ただ、オンナの身体になったのに、
オンナと恋愛するレズビアンになったので、
驚いたみたい。
だったら、トランスしなくっても、
っていうのが、おおかたの見方だ。
でもね。トランスしたのは、
あたし自身の違和感の問題で、
どういうひとを好きになるかとは、また別問題なんだ。
ようやく、あたしは、あたしになって、
ちゃんと恋愛できるようになったとき、
好きになるひとたちが、女性だったってだけ。

トランスしても、そんなにすぐ
世界が変わるわけじゃなかったし、
どちらかというと、辛いこともあるけど、
それでも、あたしが、あたしのからだとこころに
ぴったりフィットしてるっていう
圧倒的な存在感は、生きてるっていうこと
そのものだった。

ただね。トランスする前は、
早起きが得意だったのに、
オンナになってからは、
どうも、朝起きるのが、つらくなってきた。
別に、トランスのせいではないのかも
しれないけど、なんか、ホルモンのバランス
のせいな気がしてならない。

だから、すぐ起きれる音楽を探していて、
毎日聞いても驚きに満ちている
メリーさんの羊にしたんだ。

で、おどろき、あわてふためきながら起きて、
急いで身支度をして、
朝ごはんのアイホップへ急いだ。

あたしの住んでるところから、
アイホップまでは、3ブロックくらいで
あたしの足でも、10分もすれば着く。

ちょうど着いたころ、
最愛のローラが、笑顔で着いたところだった。
朝のハグとキスをして、
席に案内してもらう。
朝食の時間なので、結構混んでるけど、
窓側の席をゲットできた。

ローラは、アイホップが大好きなので、
ご機嫌で鼻歌を歌ってる。
苺のパンケーキと、チーズオムレットを
オーダーした。
もちろん、アメリカンコーヒーのセットで。

ここのパンケーキは、レギュラーで7枚くらいの
パンケーキが重なって出てくるのが、特徴だ。
ふわっふわのパンケーキが何枚も重なっているのは、
本当に、幸せな気持ちだ。
パンケーキソースは、テーブルに7種類もあって、
どれをかけようか、迷ってしまう。
ローラは、この苺のパンケーキに目がない。
これさえあれば、毎日幸せって感じだ。

あたしは、塩味のきいた
卵5個分くらいの大きなオムレットが大好き。

どちらも、二人でシェアするので、
ものすごーく豪華な朝食だ。

コーヒーがくると、
早速、ローラに、昨日の話をする。

ローラは、アートのカレッジで
同じクラスのクラスメート。
シングルマザーで占い師だ。
もう、あたしと同じで、5年に渡って
少しづつ、カレッジの単位を取っている。
ローラという名前の通り、
愛らしく、ひなげしの花のようなローラは、
直観力で描く油絵で、既に賞を取っている。
素晴らしい才能の持ち主だ。

あたしとは、出会ってすぐ、
一目で恋に落ちた、みたいに
いなくてはならない関係になった。

ローラは、感覚的でありながら、
鋭い直感を生かした言葉を
いつも的確にあたしにくれる。
この言葉と目の力は、
なにものにも変えがたい
あたしの力の源だ。

ローラに、いかにナンシーが
しつこくつきまっとって、
何も教えてくれなかったかを
何度も訴えた。

聞いていないかのように、
一心不乱に食べていたローラは、
ふっと顔を上げて、
あたしを見た。

「ねえ、ライラ。
ライラは、ナンシーと、恋に落ちたの?」

あたしは、一瞬、えっと言葉につまる。
なぜ
と心の中で叫びながら、
どこかで、ナンシーばかり考えてるあたしに
ふと気がつく。

「ライラ。あたしは、ライラが好き。
だから、ライラが好きなら、応援するわ♪」

違うってば。
全然、好きじゃない。
あ、でも、好きになったみたいに、
ぐるぐるしてる。あ~混乱する~

「うふふ~かわいい~
だから、ライラが好き!」

なんか、からかわれてる~

でも、あたしは、にっこりした。
そうだ、あたしは、ローラが好き。
ナンシーに囚われてるなんて、どうかしてる。

いつもそうだった。
あたしは、きらいって頭で考えてるひとを
ぐるぐる考えていて、
実は、こころで好きになってたことが多い。
これって、混乱するし、なんか、間違ってる。
だから、あたしからの恋愛は、上手くいかない。
ちゃんと、あたまとこころを
一致させるように、セラピーに通ってるけど、
まだまだだ。

ただ、ナンシーは、バイト先の上司だし、
どうも、ヘテロっぽい。
好きになるには、難しい相手だ。

とにかく、考えすぎず、
バイトで楽しく働けるようになろうと、
ローラと、シェアしながら、
最後には、思えるようになった。

ところで、ライラ、粘土の課題できた?

と聞かれて、慌てる。

まだなんだけど・・・

と答えると、提出は、明日が期限よ。
ちゃんと、手でイメージして
こころの形にしてね♪

とローラは、茶目っ気のある目をグリグリさせた。

さあ、まずは、2日めのバイトだ。

はりきって行ってこよう。

ありがとう。ローラ。
すごく元気がでたよ。

いってきま~す!!

つづく・・・