あたしは、久々に
朝早く、自然に目覚めた。

時計を見ると
まだ午前5時だ。
もう1回寝なおすか、
起きてしまうか、
少し逡巡したものの、
激しい尿意で、起き上がった。

そのままバスルームで
トイレとシャワーをすませ、
久しぶりに
ショッキングピンクの
ジョギングウエアーを着た。

このウエアーは、
アートカレッジの展覧会で
賞の副賞としていただいたもの。
たまたまジョギングメーカーが
スポンサーだったので、
こんなものをもらってしまったのだ。
ふだん、ジョギングなんて
ほとんどしないくせに。

でも、ショッキングピンクの
タンクトップとホットパンツは
ゴールドの縁取りがあって
かなりかわいい。
オンナの子度がアップだ。

あたしは、その気になって
高い位置でポニーテールにして
颯爽と出かけた。
もちろん、海に向かって歩く。

まだ薄暗い海への歩道は、
それでも、何人もの
ジョギングしたひとや
お散歩しているひとがいた。

あたしは、深呼吸を繰り返しながら
テンポ良く歩いた。

海まで着くと
海沿いの道を
颯爽と歩いた。

最高だ。
アシカの声も、ステキな感じがするし、
船の汽笛みたいな音が
してくる気がする。

30分も歩くと
汗が滲み
お腹が空いてきた。

ちょうど目の前に
市場を模した
ショッピングモールがある。
そこに入ると
朝食用の屋台が
湯気をあげて、あたしを待っていた。

あたしは、そのなかのひとつ
かっこいい女性が切り盛りしている屋台に
座ると、メニューをじっくりみた。

まずは、フレンチトースト。
そして、魚介類のサラダ。
フレッシュライムジュースに
食後のカフェオレ。

フレンチトーストは、
この屋台のメインのようだった。

オーダーと同時に
まずは、ライムを搾ったできたての
フレッシュライムジュースが出てくる。
その酸っぱさは、
目を覚ますと同時に
疲れた汗をかいたカラダに
ビタミンを与えてくれた。

少し待っていると
熱々のフレンチトーストがきた。
ふわっふわのナナメに大きく切られた
フランスパン風のものが
なんと3枚もやってきた。
ナイフで切ると、とろっとろ。
口に入れれば、美味しいバニラの香りで
いっぱいになる。
なんて、朝から幸せ。

にっこにこになっていると
海鮮サラダがやってきた。
このあたりの名物である
カニとアサリがふんだんに入った
サラダだった。
サラダソースは、クリーミーで
ナッツの味がして
これまた最高だ。

そして、バニラのフレーバーを
効かせた大きめカップの
カフェオレ。

こんなに贅沢な朝ごはんが
あるだろうか。

最高な朝だ。

無心になって、むしゃむしゃと
むさぼり食べていると
店主の女性が
話しかけてきた。

  お嬢さん、いい食べっぷりで
  嬉しいよ。

きゃー。
お嬢さんだって!!
女性からパスされるほど
嬉しいことはない。

あたしは、とっておきの笑顔で

  最高に美味しいです。
  ありがとう。

と話した。

あれ?
なんだろう。
この女性に、すごく見覚えがある。

あっもしかして
トランスのミーティング??

おぼろげにあたしが気づいたのが
わかったのか、
あくまでカッコイイ笑顔で
女性は、あたしに嬉しそうに
ウインクしてくれた。

あたしも、慣れないウインクを
笑顔で返す。

こんなところで、
かっこよく働いているなかまと
思いがけず出会えるなんて
素晴らしい。

あたしは、すっかり
ぺロッと食べ終わると
お勘定を払って
ハグをした。

最高に温かいハグだった。

元気百倍のあたしは、
また颯爽と歩き、
家に戻った。

家に戻るころには、
また汗をかいていたので
シャワーを浴びる。
シャワージェルは、
元気の出るミントにした。
すっきり、さっぱりだ。

あたしは、鼻歌を歌いながら
ジーンズに着替える。

ピンクで良い偶然に出会えたので
ピンクのジーンスにした。

バイトの時間には、
まだ少しあるので、
学校の課題の
粘土と匂いを
今日の朝食の再現として
作ってみた。

半分くらいの出来で、
バイトの時間だ。

さあ、急ごう。

はりきって、出かけると
バイト先の正面ドアには、
すでにお客様の行列ができていた。

今日も、忙しそうだ。

がんばろう。

従業員用のドアを開け、
小走りで階段を登った。

つづく・・・・