リズの声の不思議を
二人に熱を帯びて話した。

すると、ローラもリンダも
吸い込まれたような顔をして
熱心に聞いてくれる。

うっとりとなったローラは、
急に立ち上がると
唄い始めた。

それは、低い声で奏でる
アメリカ南部の民謡だった。

あたしとリンダも、
声を重ねてみる。

リンダは、早くからのトランスと
ボイストレーニングの効果で
低いアルトの声は、
もう十分女性だった。

あたしの声は、
二人に比較すれば
どう聞いても、オトコ声だった。

でも、ハーモニーを
重ねていると
全く気にならなかった。

あたしたちは、
ローラの声の波動みたいな
不思議な魅力に
すっかりのみこまれていた。

そう、リズの声が
パイプオルガンの和音のような
効果を波及してくれるように

ローラの声は、
ハンドベルのように
それぞれの違った音を
調和させてくれるような
そんな効果を持っていた。

なんて、ステキ!!

重なっているリンダの声は、
透明感のある
それでいて重厚な
スイスの山の中の村の鐘のようだ。

あたしたちは、みんな
ローラの声のお陰で
鈴になっていた。

声って、口や声帯だけではないのだ。

あたしは、はじめて実感した。

からだ全体から流れ出る音。
それが、声や唄なのだ。

ローラは、ゆっくりと
手やからだを振り動かし
あたしたちは、
そんなローラの素晴らしい流れを
感じ取って、シェアしあった。

ことばではないシェアの
あまりの素晴らしさに
あたしは、なんだか、
涙が出てくる。

気づくと、リンダも
涙を流していた。

ローラは、そんなあたしたちの顔を
誇らしげに見つめると
笑顔で厳かに言った。

  わたしたちは、神様の楽器よ。

そうなのだ。
リンダは、立ち上がって
ローラに抱きついていた。

  ローラ、ありがとう。
  あたし、トランスしてからも、する前も、
  声は、すごくコンプレックスだったの。
  今日、その恐れが少し取れた気がする。

あたしは、びっくりした。
リンダは、顔もからだも声さえも、
社会的には、ほぼ100%
女性としてパスしているのに、
やっぱりコンプレックスがあったことに。

みんな、コンプレックスや
深刻な悩みを抱えながら
こうして生きているのだ、と
あたしは、ようやく気づけたようだった。

これまでは、
あたしは、自分のことで
精一杯で、あたしがあたしが、だった。

でも、もっと、あたしだけでなく
みんなも見れるようになってこそ、
あたしもあたしを見れるのだ。

そうなんだ。
ローラのゴールドのストールに
三人で巻かれて
あたしたちは、幸せだった。

ありがとう、ローラ。
ありがとう、リンダ。

あたしは、二人に出会えて
本当に幸せよ。

三人で、ローラのゴールドの
ストールに巻かれたまま
お店を出て
歩いた。

お部屋に帰ると、
あたしの肩や首には、
ローラの気配が
残っていた。

あたしは、すっかり幸せになり、
ゴールドの色がつく
グリーンティーの入浴剤で
バスに浸かった。

今夜は、満月。

すばらしい月の光が、
ドアを開けたバスの中まで
サンルームから
差し込んできた。

あたしは、月光を浴びながら
お祈りした。

幸せがずっと続きますように。
あたしが、オンナでありますように。

月は、グリーンティーのあたしを
祝福しているかのように
笑ってみえる。

あたしは、バスから出て
真っ白なタオル地のバスロープのまま
サンルームで
月光浴をした。

とっても、温かいような
そんな気持ちになり、
幸せ感が増していた。

ありがとう。

ひとりで、ぽつっと
満月にお礼を言って

あたしは、ベットにジャンプして
そのまま眠ってしまった。

つづく・・・・・・