【キラキラしたい☆】8
でーきた!!
粘土をこねくりまわし、
月の光のインスピレーションのおかげで
とうとう作品が
できあがってくれた。
まさに、できた!と
粘土が叫んでいる感じ。
その作品は、
らせん階段のような
円錐型の形に
不規則に段がくっついているもの
ランダムなレインボーに
色をつけた。
あたしの未来につづく装置
をイメージしたもので、
タイトルは、
『あたしロケット発射装置』
まさに、いまのあたしは、
ロケットのように、
新しい宇宙へ飛び立とうと
しているのかもしれない。
発射装置を前に、
ロケットを調整して
あたしを訓練しているところだ。
あたしは、
ふかふかのベージュの
サンルームチェアに座りながら
温かい珈琲をすすって、
ひとりごちた。
まだ、月の光は、
強くあたしを照らしてくれていた。
ゆったりと、月光浴しながら、
達成感を味わいつつ、
ボサノバをかけて、リラックスする。
気がつくと、さんさんとした
太陽の熱い光で目が覚めた。
どうも、昨夜は、
眠ってしまったようだった。
のびをして、太陽に挨拶し、
昨夜の作品を太陽の光のもとで
眺めた。
すばらしい。
未来に向かっていく
力強さが、見えて、
あたしは、嬉しかった。
あたしは、あたしになって、
本当に、強くなったと思う。
まだ、あたしではなかったころ、
とても弱かった。
こころもからだも、
限界までチャレンジしてた。
そうでないと、
オトコのなかで生きていけなくて、
オトコらしくなるために、
異常なほど、努力していた。
でも、あたしは、
どこかでオトコのあたしを否定してて、
それがこころのなかで
鮮血を噴出させている感じだった。
ママもパパも、
そんなあたしを見ていて、
がんばり過ぎなくていいのに、
もっとリラックスしていいのよ、
と言ってくれていたけど、
がんばらなければ、
あたしのついている大きな嘘に
あたしが騙されなくなってしまい、
本当に生きていけなくなる気がして、
とっても、つらかった。
小学生のころから、
授業で、性暴力のお話しと並んで
性のグラデーションとして
さまざまな性も学んできたけれど、
ディスカッションは、怖かった。
いつか、自分の嘘や隠しているものが
ばれるんじゃないかと思って、
思いっきりステレオタイプの意見を
述べてしまっていた。
あのとき、もっと素直に
学校カウンセラーに相談してたら、
違っていたのかな~
高校に入学して、
あたしは、アルコールに耽溺しては
学校に行けなくなるという
状態を繰りかえすようになった。
パパも、ママも、
心配して、いろんなことを
言ってくれたけど、
あたしには、アルコールに耽溺することが
唯一の癒しだったから、
やめられなかった。
学校から、カウンセラーを紹介された。
あたしは、学校の退学を避ける
交換条件として、担任から言われたので、
いやいやカウンセリングに行ったのだ。
紹介されたカウンセリングセンターは、
『プリン』
という、名前だった。
ちなみに、センターマークは、
まさに、あの洋菓子のプリンだったから
なんだか、小児科にきたみたいだった。
初めての受診からひとりで行った
あたしの前に、変なオジサンがきた。
ちょっとむっとした感じで、
ほんの少し、にこっとしたかもくらいで
ぼくが君の担当のカウンセラーのランだ。
よろしく
と言ってきた。
変なオジサンって思って、
あたしは、横向いてたら、
君は、アルコールの問題があるから
AAの思春期グループに行きなさい
って急に言われた。
あたしは、むっとして
君じゃなくて、ライラです。
というと、楽しそうに、ランは大笑いして
ライラって、ライオンみたいだね。
なーんて、言って、終わりだった。
あたしは、初めてだったけど、
いくらなんでも、これは、
カウンセリングって感じじゃなかった。
そのまま、カウンセリングルームを
退出すると、
廊下で、ナースのジョゼフィンが待っていた。
そう、その日から、思春期AAグループの
ニューカマーセッションに行かされたのだ。
これが、あたしの運命の出会いだった。
このグループに、
最愛のローラがいたのだ。
あのとき、ランDrと出会い、
グループにつながらなかったら、
いまのあたしは、いなかった。
運命ってあるんだよね。
いまなら、わかる。
ランDrの口癖
悩みは、恵み
本当に、恵みだった。
あたしに、たくさんの
正直に語れるなかまとの出会いが
待っていたのだ。
粘土をこねくりまわし、
朝日をたっぷり浴びたせいか、
すっかり、過去のことを
思い出してしまった。
冷たいオレンジジュースを
飲みながら、キッチンで
あたしは、ベーグルに
クリームチーズとアボカドを
はさんで、熱い珈琲を淹れた。
今日は、午後から、
バイト先で、初めての
ウエイトルスミーティングだ。
それまで、のんびり過ごそうと
決めた。
朝食を食べ終わると、
あたしは、深い青に塗られた
バスルームに行った。
金色の猫足のついた
バスタブに
バニラの香りのバスバブルを入れて、
勢いよくお湯をだした。
ゴージャスな1日の始まりだ。
悪くない。
あたしは、ジャズをかけ、
ステップを踏んでいた。
つづく・・・