家に着く直前に携帯が鳴った。
ローラからだ。
なんだろうと電話に出ると
ステキなパーティーのお誘いだった。

あの『ブラックアイ』で
ナオミ先生のパートナーの方が
ZENの会を開くのだそうだ。
また、いろんな石やもののなかで
ダンの素晴らしい声を聞けるのか
と思うと、ドキドキした。

あたしたちは、近所で待ち合わせして
バートで出かけることにした。

ナオミ先生のパートナーの方と
お会いするのも初めてなので
わくわくするし、
ZENというものも
よく知らないので楽しみだ。

相変わらず、とっても可愛い
アジアンテイストの衣装に身を包み
元気いっぱいのローラは、
その声を聞いているだけで
あたしは、ハッピーだった。

あっというまにお店について
ドアを開けると、
すぐにダンがあの独特の素晴らしい声で
歓迎してくれた。

奥のカフェスペースに案内されて
ナオミ先生が紅潮した頬で
嬉しそうにいた。

ローラが、ナオミ先生に
お誘いしてくださって
ありがとうございます、と挨拶すると
ナオミ先生は、いつもの先生な感じが
すっかり抜けていて、
とてもチャーミングな女性に
なっていて、嬉しそうに
きてくれてありがとうと言ってくれた。

そして、あたしたちが見たこともない
不思議な布をまとっただけのような
ものを着たパートナーを紹介してくれた。

  ロジンです。よろしく。

と、低く小さい声で話し
合掌した。
その細く筋が見えるような容姿といい
か細い声といい、あたしたちのイメージする
“仙人”そのものだった。

中国風の野菜炒めやスープなどが並べられて、
ハイビスカスのお茶が煎れられると、
もくもくと煙が出てくるお香のような
ものに一斉に点火された。

あたしたちは、お料理やお茶を
いただきながら、
そのショーのようなものを
うっとりと眺めた。

それは、何か武道のようにも
踊りのようにも見える
動きで、鈴の音のような音楽に
乗せられて、ゆるやかに流れていく。

そして、ゆるゆると時間が流れ、
ドラの音のようなものが響き、
あたしたちに向かって
お祈りを座禅の姿勢で始めた。

ダンが静かに立ち上がり、
あたしたちにも、
思い思いで良いので
お祈りを捧げてください、と
ささやくように伝えてくれる。

あたしとローラは、
椅子から下りると
紫色の絨毯の上で裸足になり
胡坐のようなかたちですわり
合掌した。

それは、濃厚な香りと
鈴の音と圧倒的なロジンの
静かな迫力でできた
不思議な場を形成していた。

あたしたちは、幽玄の世界のような
不思議な感覚におそわれた。

どれほど、時間が経っただろう。

気づくと、あたしたちは、
涙が流れていた。

そこに集まった15人くらいのひとたち
みんなの瞳が濡れている。
静かな流れの温かい気持ちが
胸いっぱいになるようだった。

ナオミ先生は、
滂沱の涙で、感激している。
その頬は、やはり紅潮したままで
幸せそうに見えた。

あとから、ダンが説明してくれた
ところによると、
ZENとKARATEの融合のような
ものだっったらしい。

あたしたちにとっては、
目の前で東洋風のものを観たのは
生まれて初めてだったので
ただただ感激していた。

それは、ロジンとあたしたち観客が
一体となるステージで、
その一体感は、恐ろしくなるほどの
凄まじい力だった。

あたしは、自分が涙を流していることに
気づかないほど、その世界にいた。

その世界は、茫洋としたお花畑で
そこここにぼんやりとしたまあるい形の
ランプが浮かんでいた。
静かでいながら、パワーを
あちこちから感じることのできる
宇宙のようだった。

あたしたちは、
ダンの声でグランディングをして
この世界に戻ってきた。

そして、この世界でも、
あの世界のパワーを
取り入れることのできる
鍵をもらったような気がした。

すっかり興奮したローラは、
不思議な踊りをまだ踊っていた。
そして、可愛らしい声を出して
受けたパワーについて
機関銃のように話している。

あたしも、なんだか興奮していて
勝手きままにシェアしていた。

それを静かに嬉しそうに
テーブルを回っている
ロジンが聞いている。

ロジンは、不思議なパワーを
キラキラと発散していた。

不思議なひとだ。

こんな不思議なひとと
一緒に住んでいるナオミ先生は、
インスパイアされて
素晴らしい作品が生み出されるはずだと
あたしは、思った。

ここには、いろんな石や
すばらしいものがある。
でも、もっと素晴らしいのは、
ひとの持つ力だった。

そして、ひとりでは到底感じられない
この集団の力は、
あたしにこころの平安と力を
与えてくれる。

オンナでいることの苦しさ、喜び、
そして、オトコの考えのしんどさ、
それは、でも生きているパワフルさ
であることを信じられた。

今日は、1日、とってもミラクルだった。
このミラクルハッピーを
しっかり、こころに刻んでいこうと思った。

ローラは、オリエンタルな調べの
ダンスの輪に入って踊っている。
あたしも、ローラの差し出す腕に
しっかりと掴んで
ダンスを踊り始めた。

ありがとう。。。

つづく・・・・