思いっきり語りつくし、
あたしは、こころが元気いっぱいになって
家に帰った。

玄関を入ると
バスルームに直行した。
イチゴの香りのピンクのバブルバスを
勢いよく出したお湯で
ふわふわに泡立たせる。

あっというまに、ピンクのあわあわで
どこまでがバスタブかわからないほどになった。

あたしは、熱めのお湯に
さっと裸になって
静かに入った。

まさに、自分がイチゴのような気持ち。

あわのなかで、ぶくぶくと
お湯にもぐったり、
ぷはーと出たりしては、
冷え切ったからだを温め、
あちこちをキレイに泡立てて
イチゴにしてしまった。

もうがまんできないくらい
温まってしまうと、
あたしは、満足して
シャワーで泡を流した。

ピンクのバスローブを着て
キッチンで温めたミルクを飲む。

今日1日は、とっても長かった。

あたしは、自分へのご褒美を
あげることにした。

BODY SHOPで衝動買いした
イチゴのボディーバターの
包みをあけて、
自分をますますイチゴにしよう!
が今日のご褒美。

でも、疲れすぎていて、
自分ではできそうになかった。

近所の24時間エステサロンに電話して
いつものルルに出張してきてもらうことにする。

幸いにも、ルルは、ちょうどいま、
出勤したところだった。

たったの5分でルルの車が
停まる音がした。

あたしは、ルルのやわらかなアルトの声が
玄関でするのを、うきうきしながら
待った。

ルルは、いつものように、
元気いっぱいで、跳ねている。

あたしは、ワガママを言って
イチゴのボディーバターで
全身のマッサージをしてもらうことにした。

すぐに、あたしのベットルームに行き、
ルルは、特別な布をベットに敷いてくれた。

あたしは、そのうえに、
まっぱだかでうつぶせになった。

魔法のように、ルルのバックから
温かいパワーストーンが
出てきた。

まずは、ストーンマッサージよ、
とルルは、小さく言った。

あたしは、その温かい石の
マッサージで、すでに夢見心地だった。

背中に、10個ほど
温かいパワーストーンが置かれ、
加えて2個の温めたストーンで
ルルがあたしの両腕や頭を
ゆっくりマッサージする。

あっというまに、
あたしは、深い夢のなかにいた。

夢は、ドイツの森のなかのようだった。
あたしは、暗い森のなかで
勇敢にもひとりで歩いていた。
なぜか、ふたつに分かれる道が
次々に目の前に現れる。
あたしは、迷いもなく、当然のように
そのふたつの道を一瞬でどちらに行くか決めて
歩き続けていた。
すると、大きな広場に着いた。
その広場には、まるでスポットライトに
当てられたように、太陽がさんさんと
差し込んでいて、まぶしいくらいだった。
あたしが笑顔で、太陽を浴びていると
あたしの前に、楕円形のゴールドの
UFOがやってきた。
あたしは、迷いもなく、そのゴールドの
UFOに乗り込み、宇宙へ旅立った。

ああ、宇宙に行くんだ、あたし、
とどこかで思いながら、
なんか、声がする、と気づいた。

ルルが、終わりました~と
歌うように言っていた。

あたしは、頭を少し振って
半分だけ覚醒し、
ルルを玄関から送り出すと
鍵をかけて、
また、さっさとベットに戻り、
ぐっすり眠ってしまった。

満ち足りた睡眠から目覚めると
まるで、もう昼間のような
太陽の光に満ちていた。

あたしは、昨日の夢を思いだし、
不思議な気持ちになりながら、
なぜ、今日は目覚ましが
鳴らなかったんだろうと思った。

時計を見ると、午前10時。
満ち足りているわけだ。

なぜか鳴らなかったタイマーに
感謝しながら、
自分のイチゴの香りに
うっとりした。

ベットから起き上がると、
濃厚なイチゴの香りだった。

ああ、あたし、イチゴだわ!
と急に嬉しくなって、
らんららん、と階段を下りた。

さあ、何を食べようか。

キッチンに行き、
冷蔵庫を開ける。

マフィンがあったので、
ハムとチーズをはさみ、
トースターで焼く。
トマトとレタスで、簡単なサラダを作り
濃い目の珈琲を淹れた。

リビングで食べようと
テーブルまで運び、
無意識にテレビをつける。

マフィンを口に入れて
味わおうとした瞬間、
見慣れた景色が、テレビに映った。

あたしのバイト先の
ベーカリーカフェだ。

昨日の事件を報道していた。

ナンシーや“ジャック・スミス”
そして、プリシラやプリシラの恋人のことまで
事細かにアナウンサーが話している。

朝起きたときには、
昨日のことは、なんだか
夢のなかの出来事のように感じたけど、
やっぱり本当に起きたことなんだよね、
とあたしは、ため息をついた。

携帯が、ひっきりなしに鳴っている。

あたしは、けだるく携帯を開く。

見ると、クラスメートや友人たちからの
お見舞いのメールや留守電で
あふれていた。

あたしは、思わず、
涙がこぼれた。

ありがとうございます。

こんなにあたしのことを
心配してくれるひとがいたことに
こころから感動と感謝が
あとからあとから湧いてきて
涙が止まらない。

急に、おなかで実感する。

あたしは、愛される存在なんだ!!

グループセラピーの
リトリートで愛されているあたしの場面が
ふと蘇り、
あたしは、からだとこころまるごと
愛に満ちていた。

ありがとう。
ほんとうに、ありがとう。

つづく・・・・