走って学校に着いたときには、
もう授業は始まってた。
ナオミ先生が何か一心不乱に説明している。
モデルさんがいたので、
今日は実習のようだ。

あたしは、スナックルームで
ひと息入れてからと思い、
らんらんらんとスキップした。

スナックルームには、
悩めるジョンがいた。
じーと手元の珈琲紙コップを
見つめて固まっている。

あたしは、そーっと自販機の前に行き
チョコレートバーのアイスを
買った。
うっかり、らんらんらんと
鼻歌を歌いながら
椅子に座ろうとしたら、
ジョンがあたしに気づいた。

ジョンは、悩みごとを
聞いて欲しそうだったけど、
あたしには、ジョンの悩みは
むずかしいんだよね。

と思いながら、
ジョンに挨拶して
少し離れた椅子に座ってしまう。

なのに、ジョンは、
あたしに向かって
話しかけた。

  やっぱりさあ、
  女の子って、彼氏と会話ができないと
  いやかな。

って。

それは、そうでしょ。
会話が成立しない恋人同士って
ありえないよ。

でも、あたしのことを
ホンモノのオンナとして相談するのは、
間違ってるよ、と
こころで叫ぶ。

  あたしなら、いやだな。

って、まともな答えを言った。
すると、そのままジョンは、
また固まった悩む像になってしまった。

あたしは、素早くアイスを食べ終わると
教室に急いだ。

ちょうど講義室から、実習室に
移動するところだった。

あたしは、ローラとハグして、
実習室では、ローラの隣を
ゲットした。

モデルは、男女のペア。
なんと、テーマは、永遠の愛とかで
モデルの男女が白い薄布を羽織っただけの
格好で、ハグしているという
ポーズでフリーズした。

ナオミ先生は、
  このポーズを自分なりにアレンジして
  粘土で表現しなさい。
  120分以内で。
と指示した。

あたしは、まず、粘土を選ぶ。
やわらかめの粘土にしようと決め、
色を選んだ。

永遠の愛か。
むずかしい。
何色がいいだろうか。

ローラをそっと見ると
すでに一心不乱に考え中モードになっていて
めちゃくちゃ可愛い踊りを踊っていた。

あたしは、それを見ながら、
ピンクとダークレッドの2色で
作ってみることにした。

モデルを見る。
信じられないくらい
普通の男女だ。
しっかりハグしてる状態を
キープできてるのが、えらい。
さっき、たまたま、ここにきただけの
バイト仲間なのにね。

ピンクとダークレッドの粘土は、
あたしの手のなかで
微妙に混ざり合う。
まるで、珈琲にまざっていく
クリームをイメージした。

そして、モデルの外郭を
形にする。

どうしても抵抗があるのは、
あたしがレズビアンなので、
男女のペアっていうところ。

だから、あたしの頭の中では、
勝手にオンナ×オンナにしてしまう。

すると、面白いように
あたしの手は、動いた。

あっというまに、
粘土のふたりから
天使の羽がはえてくる。
全体にも、ふたりを取り巻く
オーラのようなものを作り上げた。
ついでに、キューピットさんを
作って、ある場面設定のように
可愛らしい作品になった。

できあがったときには、
100分だった。
すでに、クラスメートの3分の1しか
実習室にはいない。

みんなの作品だけが、
残っているさまは、
とても幸せな雰囲気に満ちていた。

それぞれの永遠の愛の
テーマ色とイメージが
見事に作品になっている。

すばらしい。

でも、天使は、あたしだけだ。

ローラは、と思ってみると、
汗をかきながら、
自分の身長くらいの粘土と
戦っていた。
すごいわ。
大きさが、半端じゃない。

みんなは、せいぜい大きくても、
自分の腕くらいだ。
ほとんどは、あたしと同じように
腕の肩から肘くらいまでの大きさ。

ローラは、なんてダイナミックなんだろう。

ローラの永遠の愛は、
とても大きく偉大なことを
実感した。

あたしは、幸せになった。

ありがとう、ローラ。
その作品を見ることができただけで、
あたしは、幸せだよ。

と、こっそりつぶやいて、
静かに退出した。

つづく・・・・・