学校に着くと、
すでにナオミ先生の授業が始まっていた。
できるだけ目立たないように
そーっとクラスルームに入ると
ローラが気配を感じたのか、
にっこり笑顔で見つめてくれた。
ほかのクラスメートは、
なにやら一心不乱にノートを取っている。

今日の講義は、
粘土のメリット・デメリットについて

粘土にも、さまざまな種類があるので
歴史を紐解きながら
すべての粘土の種類の
メリット・デメリットが
パワーポイントに出されていた。

うわー、これってテストに出そう。
でも、難しいわ。
だいたい、メリット・デメリットって
一言でタイトルしてるけど、
内容は、細かく分類されていて
さまざまなことを網羅されている。
粘土の種類だって、
まだ全部覚えきれていないあたしは、
すっかり、頭を振って
小さくオーマイガットとつぶやいた。

ものすごく大量の筆記が必要な
今日の授業は、
みんな一言も話さないで、
一心不乱なのがよくわかった。

しかも、ナオミ先生は、
いじわるではないのだけど、
あっというまに、別の内容に
交換しちゃうので、時間に追われる。

あたしは、耐え切れず、
先生に、資料をコピーしてください、と
声を上げた。

皆からも、それに同調して声があがる。

ナオミ先生は、笑顔で、
そのつもりでしたよ、と
伝えてくれた。

一気に、脱力するクラスメートの姿に
ちょっとわらっちゃった。

で、講義が終わり、質問タイム。

相変わらず、パットの挙手は早い。

  デメリットがより多い粘土でも、
  発達してきた要因を教えてください。

だって。
粘土の歴史に、発達とは、なんだか、
別の授業な気持ちになっちゃうわ。

ローラが挙手をした。

   先生は、どうして粘土に
   インスピレーションを感じるのですか。

うんうん。
そうだよね。
こんな講義より、先生の言葉で
粘土を教えて欲しいわ~
あたしは、強く、うなづいた。

そのとき、授業をかき回すことで有名な
屁理屈やのロビンが挙手をした。

   どうして、こういうメリット・デメリットに
   なっているのでしょう。
   これは、一理論にすぎませんよね。
   さまざまな理論もあるし、
   決め付けるのは、どうかと思います。
   別の理論でのメリット・デメリットを
   教えてください。

思わず、クラスメートから
ため息がもれた。
これ以上の知識を出されたら
たまったものではないわ。
いまでも、覚えられないのに、
何を知りたいっていうんだろう。

あたしも、ふううと息を吐き、
どうしたものかと
窓の外を眺めた。

窓の外には、楽しそうな観光客が
こんな授業のことなど知らずに
うきうきと歩いていた。

あたしも、早く、うきうきしたいわと
こころのなかでつぶやいた。

出された課題は、
レポートが、あなたの粘土のメリット・デメリット。
で、好きな粘土を使って、
あなたのメリット・デメリットを
表現しようという課題まで出される。

当然、アートなんだから、
自己を表現したいと思ってるけど、
それにしても、自分のメリット・デメリットを
粘土で表現するなんて、
赤裸々だわ、とあたしは、ひとり赤面する。

さあ、どうしようか。
リンダと目が合った。
リンダは、まだ赤い目をしてる。
これから、リンダをごはんに誘おうと
あたしは、唐突に強く思った。

つづく・・・・