120分が終わったが、
ローラは、あと少しの仕上げで
一心不乱である。
ナオミ先生も、ローラの作品には、
一目置いているので、
できあがるのを静かに待った。

150分後、ローラができた。
キラキラした目と
力を出し尽くしたような脱力状態のからだを
ひきずるようにして、
講義室にやってきた。

 できました!

ローラの歌うような声が教室にひびくと
みんなが一斉に拍手する。
ナオミ先生を先頭に、
また実習室に戻り、
みんなの作品を丁寧に鑑賞した。

永遠の愛というテーマがそうさせたのか、
みんな、いつも以上に
魂が入ったような力作揃いだ。
とても、授業での作品とは思えない。
一流のギャラリーの展覧会のようだ。

ナオミ先生も、感動していた。

   これを、今回のクラスの展覧会で
   展示いたしましょう。

裏返ったような興奮した声で、
ナオミ先生は、宣言した。

あたしたちは、すっかり愛に包まれた。

実習の授業のあとは、いつもそうなんだけど、
クラスメート全員でのディナーパーティーを
そのままぞろぞろといつもの
クラッシックジャズのお店に行った。

このお店は、ちょっとした舞台があり
生演奏でジャズを聴かせてくれる。
食べ物は、ジャンクフードが中心だが、
その分リーズナブルだ。

ハンバーガーやポテトが並び、
みんなは、ビアーで乾杯した。

作品を作ったあとの
心地よい高揚感で
あたしたちは、アート論に
饒舌になる。

あっちでも、こっちでも、
このアートは、とか、
アート的な視点、とか、
をざっくばらんにシェアリングしてる。

シェアをしてる間に、
ライブでは、踊れるジャズが
テンポよく流れてきた。

ローラは、きれいな声を出して、
ちょっとしたダンスフロアーに飛び出た。
あたしも、そのあとを追い、
複雑なテンポの音楽にあわせる。
もちろん、ほとんどのクラスメートが
われ先にと、ダンスフロアーに
なだれこんできた。

飛び入りで、シンガーが
ハスキーボイスを聴かせる。

あたしたちは、
すっかり酔いながら、
からだを振り続けた。

ジャズは、ひとを酔わせる。

あたしたちは、だれかれ構わず
ハグしあい、キスしあった。

だれもが、自らの永遠の愛を思い、
それを惜しげもなくシェアし、
愛を広げていく。

その場は、すっかり、
愛のエネルギーに満ちあふれ、
あたしには、本物の天使が
見えたような気がした。

やっぱり、アートっていい。
アーティストになれて、
本当に良かった。

ママやパパは、
アーティストになると、
孤独になっちゃうんじゃないかって
すごく心配してた。

でも、本当のアーティストは、
孤独じゃない。
かならず、つながっている。
その、ひととのつながりを
自分の力にして、
素晴らしい作品を作り出すのだ。

その力は、作品になることで
すべてのひととつながれる。

なんて、素晴らしいのだろう。

あたしは、ジャズに酔ったからだで
幸せな空気を、胸いっぱい吸った。

ありがとう、みんな。
ありがとう、ローラ。

つづく・・・・・